きりにお頼み申しますと言う女の声、誰に用があって来たのか知らぬが、この雨の中をさぞ困るだろうと、僕が下りて行って開けてやったが、見るとお雪じゃないか。小宮山さんと一所だと言う、体は雨に濡れてびっしょり絞るよう、話は後からと早速ここへ連れて来たが、あの姿で坐っていた、畳もまだ湿っているだろうよ。」
 と篠田はうろうろしてばたばた畳の上を撫でてみまする。この様子に小宮山は、しばらく腕組をして、黙って考えていましたが、開き直ったという形で、
「篠田、色々話はあるが、何も彼も明日《あした》出直して来よう、それまでまあ君心を鎮めて待ってくれ。それじゃ託《ことづか》り物を渡したぜ。」
「ええ。」
「いえ、託《あずか》り物は渡したんだぜ。」
「託り物って何だ。」
「今受取ったそれさ。」
「何を、」と篠田は目も据《すわ》らないで慌てております。
「まあ、受取ったと言ってくれ。ともかくも言ってくれ、後で解る事だから頼む、後生だから。」
 魂の請状《うけじょう》を取ろうとするのでありますから、その掛引は難かしい、無暗《むやみ》と強いられて篠田は夢|現《うつつ》とも弁《わきま》えず、それじゃそうよ、請取った
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