のお客だね。」
言語道断、先《せん》を越されて小宮山はとぼんと致し、
「へい。」と言って、目をぱちくりするばかりでありまする。
「まあ、御苦労様だったね。さっきから来るだろうと思って、どんなに待っていたか知れないよ。さあまあこっちへお上りなさい、少し用があるから。」
と言った、文句が気に入らないね、用があるなんざ容易でなさそう。
十六
相手は女だ、城は蝸牛《ででむし》、何程の事やある、どうとも勝手にしやがれと、小宮山は唐突《だしぬ》かれて、度胆《どぎも》を掴《つか》まれたのでありますから、少々捨鉢の気味これあり、臆《おく》せず後に続くと、割合に広々とした一間へ通す。燈火《ともしび》はありませんが暗いような明るいような、畳の数もよく見える、一体その明《あかり》がというと、女が身に纏《まと》っている、その真蒼《まっさお》な色の着物から膚《はだえ》を通して、四辺《あたり》に射拡《さしひろ》がるように思われるのでありまする。
「ちょいと託《ことづ》ける事があるのだから、折角見えたものを情《すげ》なく追帰すのも、お気の毒だと思って、通して上げましたがね、熟《じっ》として待
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