《かるた》の絵かと疑わるる。
「ええ、」
と黒門の年若な逗留《とうりゅう》客は、火のない煙草《たばこ》盆の、遥《はるか》に上の方で、燧灯《マッチ》を摺《す》って、静《しずか》に吸《す》いつけた煙草の火が、その色の白い頬に映って、長い眉を黒く見せるほど室《ま》の内は薄暗い。――差置かれたのは行燈《あんどう》である。
「まだその以前でした。話すと大勢が気にしますから、実は宰八と云う、爺さん……」
「ああ、手《てん》ぼうの……でございますな。」
「そうです。あの親仁《おやじ》にも謂《い》わないでいたんですが、猫と一所に手毬の亡くなりますちつと、前です。」
この古館《ふるやかた》のまずここへ坐りましたが、爺さんは本家へ、と云って参りました。黄昏《たそがれ》にただ私一人で、これから女中が来て、湯を案内する、上《あが》って来ます、膳《ぜん》が出る。床を取る、寝る、と段取の極《きま》りました旅籠屋《はたごや》でも、旅は住心《すみごころ》の落着かない、全く仮の宿です……のに、本家でもここを貸しますのを、承知する事か、しない事か。便りに思う爺さんだって、旅他国で畔道《あぜみち》の一面識。自分が望んでではありますが、家と云えば、この畳を敷いた――八幡不知《やわたしらず》。
第一要害がまるで解《わか》りません。真中《まんなか》へ立ってあっちこっち瞻《みまわ》しただけで、今入って来た出口さえ分らなくなりましたほどです。
大袈裟《おおげさ》に言えば、それこそ、さあ、と云う時、遁路《にげみち》の無い位で。夏だけに、物の色はまだ分りましたが、日は暮れるし、貴僧《あなた》、黒門までは可《い》い天気だったものを、急に大粒な雨!と吃驚《びっくり》しますように、屋根へ掛《かか》りますのが、この蔽《おっ》かぶさった、欅《けやき》の葉の落ちますのです。それと知りつつ幾たびも気になっては、縁側から顔を出して植込の空を透かしては見い見いしました、」
と肩を落して、仰ぎ様《ざま》に、廂《ひさし》はずれの空を覗《のぞ》いた。
「やっぱり晴れた空なんです……今夜のように。」
「しますると……」
旅僧は先祖が富士を見た状《さま》に、首あげて天井の高きを仰ぎ、
「この、時々ぱらぱらと来ますのは、木《こ》の葉でございますかな。」
「御覧なさい、星が降りそうですから、」
「成程。その癖音のしますたびに、ひやひやと
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