ただいま》お話を伺いました。そんなこんなで村の者も行《ゆ》かなくなり、爺様も夜は恐がって参りませんから、貴下の御容子《ごようす》が分らないに因って、家つきの仏を回向《えこう》かたがた、お見舞申してはくれまいか、と云うに就いて、推参したのでございますが、いや、何とも驚きました。
 いずれ御厄介に相成らねばなりませんが、私《わたくし》もどうか唯今のその茄子の鳴くぐらいな処で、御容赦が願いたい。
 どこと云って三界《さんがい》宿なし、一泊御報謝に預る気で参ったわけで。なかなか家つきの幽霊、祟《たたり》、物怪《もののけ》を済度しようなどという道徳思いも寄らず。実は入道|名《な》さえ持ちません。手前勝手、申訳のないお詫びに剃ったような坊主。念仏さえ碌《ろく》に真心からは唱えられんでございまして、御祈祷《ごきとう》僧《そう》などと思われましては、第一、貴下の前へもお恥かしゅうございますが、いかがでございましょう。お宿を願いましても差支えはないでございましょうか。いくらか覚悟はして参りましたが、目《ま》のあたりお話を伺いましては、ちと二の足でございますが。」
「一人でも客がありますと、それだけ鶴谷では喜びますそうです。持主の本宅が喜びますものを、誰に御遠慮が入《い》りますものですか。私もお連《つれ》があって、どんなに嬉しいか知れません。」
「そりゃ、鶴谷殿はじめ、貴下の思召しはさように難有《ありがと》うございましても、別にその……ええ、まず、持主が鶴谷としますと、この空屋敷の御支配でございますな、――その何とも異様な、あの、その、」
「それは私も御同然です。人の住むのが気に入らないので荒れるのだろうと思いますが。
 そこなんです、貴僧《あなた》。逆《さから》いさえしませんければ、畳も行燈《あんどう》も何事もないのですもの。戸障子に不意に火が附いてそこいらめらめら燃えあがる事がありましても、慌てて消す処は破れ、水を掛けた処は濡れますが、それなりの処は、後で見ますと濡れた様子もないのですから。
 座敷だっていくらもあります、貴僧、」
 とふと心づいたように、
「御一所でお煩《うるさ》ければ、隣のお座敷へいらっしゃい。何か正体を見届けようなぞと云っては不可《いけ》ませんが、鶴谷が許したお客僧が、何も御遠慮には及びません。
 ただすらりと開かないで、何かが圧《おさ》えてでもいるようでした
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