《なるほど》、船《ふね》を焼《や》いたは悪《わる》いけんど、蹴込《けこ》んだとは、何《なん》たる事《こと》だの。」
「おゝ、船《ふね》を焼《や》いたは貴様《きさま》だな。それ見《み》ろ、それ見《み》ろ。汝《うぬ》、魔物《まもの》。山猫《やまねこ》か、狒々《ひゝ》か、狐《きつね》か、何《なん》だ! 悪魔《あくま》、女房《にようばう》を奪《うば》つた奴《やつ》。せめて、俺《おれ》に、正体《しやうたい》を見《み》せてくれ。一生《いつしやう》の思出《おもひで》だ。さあ、のつぺらぱうか、目一《めひと》つか、汝《おのれ》其《そ》の真目《まじ》/\とした与一平面《よいちべいづら》は。眉《まゆ》なんぞ真白《まつしろ》に生《はや》しやがつて、分別《ふんべつ》らしく天窓《あたま》の禿《は》げたは何事《なにごと》だ。其《そ》の顱巻《はちまき》を取《と》れ、恍気《とぼけ》るな。」と目《め》が逆立《さかだ》つて、又《また》じり※[#二の字点、1−2−22]と詰寄《つめよ》る。
老爺《ぢゞい》は己《おの》が面《つら》を、ぺろりと一《ひと》つ撫下《なでさ》げた。
六
いや、様子《やうす》が
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