じ》を枕《まくら》した風情《ふぜい》である。
 雪枝《ゆきえ》は、倒《たふ》れたと見《み》て、つゝと起《た》つた。
「……雪様《ゆきさま》、私《わたし》の目《め》を、私《わたし》の眉《まゆ》を、私《わたし》の額《ひたひ》を、私《わたし》の顔《かほ》を、私《わたし》の髪《かみ》を、此《こ》のまゝに……其《そ》の小刀《こがたな》でお刻《きざ》みなさいまし。」
「や、」と老爺《ぢい》が吃驚《びつくり》して、歯《は》の抜《ぬ》けた声《こゑ》を出《だ》して、
「成程《なるほど》、お天守《てんしゆ》で不足《ふそく》は言《い》ふまい、が、当事《あてこと》もない、滅法界《めつぽふかい》な。」
「雪様《ゆきさま》、痛《いた》くはない。血《ち》も出《で》ぬ、眉《まゆ》を顰《ひそ》めるほどもない。突《つ》いて、斬《き》つて、さあ、小刀《こがたな》で、此《こ》のなりに、……此《こ》のなりに、……」
「思切《おもひき》る、断念《あきら》めた、女房《にようばう》なんぞ汚《けが》らはしい。貴女《あなた》と一所《いつしよ》に置《お》いて下《くだ》さい、お爺《ぢい》さんも頼《たの》んで下《くだ》さい、最《も》う一度《い
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