ます。
あと、ものの一町《いつちやう》ばかりは、眞白《まつしろ》な一條《いちでう》の路《みち》が開《ひら》けました。――雪《ゆき》の渦《うづ》が十《と》ヲばかりぐる/\と續《つゞ》いて行《ゆ》く。……
此《これ》を反對《はんたい》にすると、虎杖《いたどり》の方《はう》へ行《ゆ》くのであります。
犬《いぬ》の其《そ》の進《すゝ》む方《はう》は、まるで違《ちが》つた道《みち》でありました。が、私《わたし》は夢中《むちう》で、其《そ》のあとに續《つゞ》いたのであります。
路《みち》は一面《いちめん》、渺々《べう/\》と白《しろ》い野原《のはら》に成《な》りました。
が、大犬《おほいぬ》の勢《いきほひ》は衰《おとろ》へません。――勿論《もちろん》、行《ゆ》くあとに/\道《みち》が開《ひら》けます。渦《うづ》が續《つゞ》いて行《ゆ》く……
野《の》の中空《なかぞら》を、雪《ゆき》の翼《つばさ》を縫《ぬ》つて、あの青《あを》い火《ひ》が、蜿々《うね/\》と螢《ほたる》のやうに飛《と》んで來《き》ました。
眞正面《まつしやうめん》に、凹字形《あふじけい》の大《おほき》な建《たて》ものが、眞白《まつしろ》な大軍艦《だいぐんかん》のやうに朦朧《もうろう》として顯《あらは》れました。と見《み》ると、怪《あや》し火《び》は、何《なん》と、ツツツと尾《を》を曳《ひ》きつゝ。先《さき》へ斜《なゝめ》に飛《と》んで、其《そ》の大屋根《おほやね》の高《たか》い棟《むね》なる避雷針《ひらいしん》の尖端《とつたん》に、ぱつと留《とま》つて、ちら/\と青《あを》く輝《かゞや》きます。
ウオヽヽヽヽ
鐵《てつ》づくりの門《もん》の柱《はしら》の、やがて平地《へいち》と同《おな》じに埋《うづ》まつた眞中《まんなか》を、犬《いぬ》は山《やま》を乘《の》るやうに入《はひ》ります。私《わたし》は坂《さか》を越《こ》すやうに續《つゞ》きました。
ドンと鳴《な》つて、犬《いぬ》の頭突《づつ》きに、扉《とびら》が開《あ》いた。
餘《あま》りの嬉《うれ》しさに、雪《ゆき》に一度《いちど》手《て》を支《つか》へて、鎭守《ちんじゆ》の方《はう》を遙拜《えうはい》しつゝ、建《たて》ものの、戸《と》を入《はひ》りました。
學校《がくかう》――中學校《ちうがくかう》です。
唯《ト》、犬《いぬ》は廊下《ら
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