吹雪の中の、雪道に、白く続いたその宮を、さながら峰に築いたように、高く朦朧《もうろう》と仰ぎました。
「さあ、一息。」
 が、その息が吐《つ》けません。
 真俯向《まうつむ》けに行く重い風の中を、背後《うしろ》からスッと軽く襲って、裾《すそ》、頭《かしら》をどッと可恐《おそろし》いものが引包むと思うと、ハッとひき息になる時、さっと抜けて、目の前へ真白《まっしろ》な大《おおき》な輪の影が顕《あらわ》れます。とくるくると廻るのです。廻りながら輪を巻いて、巻き巻き巻込めると見ると、たちまち凄《すさま》じい渦になって、ひゅうと鳴りながら、舞上って飛んで行《ゆ》く。……行くと否や、続いて背後《うしろ》から巻いて来ます。それが次第に激しくなって、六ツ四ツ数えて七ツ八ツ、身体《からだ》の前後に列を作って、巻いては飛び、巻いては飛びます。巌《いわ》にも山にも砕けないで、皆北海の荒波の上へ馳《はし》るのです。――もうこの渦がこんなに捲《ま》くようになりましては堪えられません。この渦の湧立《わきた》つ処は、その跡が穴になって、そこから雪の柱、雪の人、雪女、雪坊主、怪しい形がぼッと立ちます。立って倒れる
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