ん》の吉報《きつぱう》傳《つた》はるとともに幾干《いくばく》の猛將《まうしやう》勇士《ゆうし》、或《あるひ》は士卒《しそつ》――或《あるひ》は傷《きず》つき骨《ほね》も皮《かは》も散々《ちり/″\》に、影《かげ》も留《とゞ》めぬさへある中《なか》に夫《をつと》は天晴《あつぱれ》の功名《こうみやう》して、唯《たゞ》纔《わづか》に左《ひだり》の手《て》に微傷《かすりきず》を受《う》けたばかりと聞《き》いた時《とき》、且《か》つ其《そ》の乘組《のりく》んだ艦《ふね》の帆柱《ほばしら》に、夕陽《せきやう》の光《ひかり》を浴《あ》びて、一|羽《は》雪《ゆき》の如《ごと》き鷹《たか》の來《きた》り留《とま》つた報《はう》を受《う》け取《と》つた時《とき》、連添《つれそ》ふ身《み》の民子《たみこ》は如何《いか》に感《かん》じたらう。あはれ新婚《しんこん》の式《しき》を擧《あ》げて、一年《ひとゝせ》の衾《ふすま》暖《あたゝ》かならず、戰地《せんち》に向《むか》つて出立《いでた》つた折《をり》には、忍《しの》んで泣《な》かなかつたのも、嬉涙《うれしなみだ》に暮《く》れたのであつた。
あゝ、其《そ》のよ
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