知《し》り給《たま》ふべし。おなじ荷《に》の中《なか》に菎蒻《こんにやく》キツトあり。
 蕎麥《そば》、お汁粉《しるこ》等《など》、一寸《ちよつと》入《はひ》ると、一ぜんでは濟《す》まず。二ぜんは當前《あたりまへ》。だまつて食《た》べて居《ゐ》れば、あとから/\つきつけ裝《も》り出《だ》す習慣《しふくわん》あり。古風《こふう》淳朴《じゆんぼく》なり。たゞし二百が一|錢《せん》と言《い》ふ勘定《かんぢやう》にはあらず、心《こゝろ》すべし。
 ふと思出《おもひだ》したれば、鄰國《りんごく》富山《とやま》にて、團扇《うちは》を賣《う》る珍《めづら》しき呼聲《よびごゑ》を、こゝに記《しる》す。
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團扇《うちは》やア、大團扇《おほうちは》。
うちは、かつきツさん。
いつきツさん。團扇《うちは》やあ。
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 もの知《し》りだね。
 ところで藝者《げいしや》は、娼妓《をやま》は?……をやま、尾山《をやま》と申《まを》すは、金澤《かなざは》の古稱《こしよう》にして、在方《ざいかた》鄰國《りんごく》の人達《ひとたち》は今《いま》も城下《じやうか》に出《い》づる
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