逗子より
泉鏡花

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)仕《つかまつ》れ

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一鎌|仕《つかまつ》れ

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「山+険のつくり」、第3水準1−47−78]しき

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)なか/\
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 拝啓、愚弟におんことづけの儀承り候。来月分新小説に、凡兆が、(涼しさや朝草門に荷ひ込む)趣の、やさしき御催しこれあり、小生にも一鎌|仕《つかまつ》れとのおほせ、ゐなかずまひのわれらにはふさはしき御申しつけ、心得申して候。
 まづ、何処をさして申上げ候べき。われら此の森の伏屋、小川の芦、海は申すまでも候はず、岩端、松蔭、朝顔、夕顔、蛍、六代御前の塚は凄く涼しく、玄武寺の竜胆は幽に涼しく、南瓜の露はをかしげに涼しく、魚屋の盤台の鱸は……実は余りお安値《やす》からず涼しく、ものにつけ涼しからぬはこれなく候。わけて此の頃や、山々のみどり
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