でございます。
 停車場の新築|開《びら》き。」
 如何《いか》にも一月《ひとつき》ばかり以前から取沙汰《とりさた》した今日は当日。規模を大きく、建直《たてなお》した落成式、停車場《ステイション》に舞台がかかる、東京から俳優《やくしゃ》が来る、村のものの茶番がある、餅《もち》を撒《ま》く、昨夜も夜通し騒いでいて、今朝《けさ》来がけの人通りも、よけて通るばかりであったに、はたと忘れていたらしい。
「まったくお話しに聞惚《ききと》れましたか、こちらが里《さと》離《はな》れて閑静な所為《せい》か、些《ちっ》とも気が附《つか》ないでおりました。実は余り騒々《そうぞう》しいので、そこを遁《に》げて参ったのです。しかし降りそうになって来ました。」
 出家の額《ひたい》は仰向《あおむ》けに廂《ひさし》を潜《くぐ》って、
「ねんばり一湿《ひとしめ》りでございましょう。地雨《じあめ》にはなりますまい。何《なあに》、また、雨具もござる。芝居を御見物の思召《おぼしめし》がなくば、まあ御緩《ごゆっく》りなすって。
 あの音もさ、面白可笑《おもしろおかし》く、こっちも見物に参る気でもござると、じっと落着いてはい
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