い、快《こころよ》からぬ、滅入《めい》った容子《ようす》に見えて、ものあわれに、命がけにでも其奴《そいつ》らの中から救って遣《や》りたい感じが起った。家庭の様子もほぼ知れたようで、気が揉《も》める、と言われたのでありますが、貴下《あなた》、これは無理じゃて。
 地獄の絵に、天女が天降《あまくだ》った処《ところ》を描いてあって御覧なさい。餓鬼《がき》が救われるようで尊《とうと》かろ。
 蛇が、つかわしめじゃと申すのを聞いて、弁財天《べんざいてん》を、ああ、お気の毒な、さぞお気味が悪かろうと思うものはありますまいに。迷いじゃね。」
 散策子はここに少しく腕組みした。
「しかし何ですよ、女は、自分の惚《ほ》れた男が、別嬪《べっぴん》の女房を持ってると、嫉妬《やく》らしいようですがね。男は反対です、」
 と聊《いささ》か論ずる口吻《くちぶり》。
「ははあ、」
「男はそうでない。惚れてる婦人《おんな》が、小野小町花《おののこまちのはな》、大江千里月《おおえのちさとのつき》という、対句《ついく》通りになると安心します。
 唯今《ただいま》の、その浅黄《あさぎ》の兵児帯《へこおび》、緋縮緬《ひぢりめ
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