えさ》は振舞《ふるま》う気で、粋《いき》な後姿を見送っていたものと見えますよ。
(やあ、)と言って、十二、三の一番上の児《こ》が、駈けて返って、橋の上へ落して行った白い手巾《ハンケチ》を拾ったのを、懐中《ふところ》へ突込《つッこ》んで、黙ってまた飛んで行ったそうで。小児《こども》だから、辞儀《じぎ》も挨拶《あいさつ》もないでございます。
 御新姐《ごしんぞ》が、礼心《れいごころ》で顔だけ振向いて、肩へ、頤《おとがい》をつけるように、唇を少し曲げて、その涼《すずし》い目で、熟《じっ》とこちらを見返ったのが取違えたものらしい。私《わたくし》が許《とこ》の客人と、ぴったり出会ったでありましょう。
 引込《ひきこ》まれて、はッと礼を返したが、それッきり。御新姐《ごしんぞ》の方は見られなくって、傍《わき》を向くと貴下《あなた》、一厘土器《いちもんかわらけ》が怪訝《けげん》な顔色《かおつき》。
 いやもう、しっとり冷汗《ひやあせ》を掻いたと言う事、――こりゃなるほど。極《きまり》がよくない。
 局外《はた》のものが何んの気もなしに考えれば、愚にもつかぬ事なれど、色気があって御覧《ごろう》じろ。第一
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