醜婦を呵す
泉鏡花

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)村夫子《そんぷうし》は

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)道義的|誤謬《ごびう》

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)汲々《きふ/\》
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 村夫子《そんぷうし》は謂《い》ふ、美の女性に貴ぶべきは、其面《そのめん》の美なるにはあらずして、単に其意《そのこゝろ》の美なるにありと。何《なん》ぞあやまれるの甚《はなはだ》しき。夫子《ふうし》が強《あなが》ちに爾《しか》き道義的|誤謬《ごびう》の見解を下したるは、大早計にも婦人を以て直ちに内政に参し家計を調ずる細君と臆断《おくだん》したるに因るなり。婦人と細君と同じからむや、蓋《けだ》し其|間《あひだ》に大差あらむ。勿論《もちろん》人の妻なるものも、吾人《ごじん》が商となり工となり、はた農となるが如《ごと》く、女性が此世に処せむと欲して、択《えら》ぶ処の、身過《みすぎ》の方便には相違なきも、そはたゞ芸妓《げいぎ》といひ、娼妓《しやうぎ》といひ、矢場女《やばをんな》といふと斉《ひと》しく、一個任意の職業た
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