《なかんづく》先頭《せんとう》に立《た》つたのには、停車場《ていしやば》近《ぢか》く成《な》ると、五疋《ごひき》ばかり、前後《ぜんご》から飛《と》びかゝつた。叱《しつ》、叱《しつ》、叱《しつ》! 畜生《ちくしやう》、畜生《ちくしやう》、畜生《ちくしやう》。俥夫《くるまや》が鐵棒《かなぼう》を振舞《ふりまは》すのを、橋《はし》に立《た》つて見《み》たのである。
其《そ》の犬《いぬ》どもの、耳《みゝ》には火《ひ》を立《た》て、牙《きば》には火《ひ》を齒《は》み、焔《ほのほ》を吹《ふ》き、黒煙《くろけむり》を尾《を》に倦《ま》いて、車《くるま》とも言《い》はず、人《ひと》とも言《い》はず、炎《ほのほ》に搦《から》んで、躍上《をどりあが》り、飛蒐《とびかゝ》り、狂立《くるひた》つて地獄《ぢごく》の形相《ぎやうさう》を顯《あらは》したであらう、と思《おも》はず身《み》の毛《け》を慄立《よだ》てたのは、昨《さく》、十四年《じふよねん》五月《ごぐわつ》二十三日《にじふさんにち》十一時《じふいちじ》十分《じつぷん》、城崎《きのさき》豐岡《とよをか》大地震《おほぢしん》大火《たいくわ》の號外《がうぐわ
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