せう。濟《す》みませんねえ。あなたも厭《いや》だといふし、其《それ》に私《わたし》も、そりや樣子《やうす》を知《し》つて居《ゐ》て、一所《いつしよ》に苦勞《くらう》をして呉《く》れたからツたつても、※[#「姉」の正字、「※[#第3水準1−85−57]」の「木」に代えて「女」、715−2]《ねえ》さんには極《きまり》が惡《わる》くツて、内《うち》へお連《つ》れ申《まを》すわけには行《ゆ》かないしさ。我儘《わがまゝ》ばかり、お寢《よ》つて在《い》らつしやつたのを、こんな處《ところ》まで連《つ》れて來《き》て置《お》いて、坐《すわ》つてお休《やす》みなさることさへ出來《でき》ないんだよ。」
お柳《りう》はいひかけて涙《なみだ》ぐんだやうだつたが、しばらくすると、
「さあ、これでもお敷《し》きなさい、些少《ちつと》はたしになりますよ。さあ、」
擦寄《すりよ》つた氣勢《けはひ》である。
「袖《そで》か、」
「お厭《いや》?」
「そんな事《こと》を、しなくツても可《い》い。」
「可《よ》かあありませんよ、冷《ひ》えるもの。」
「可《い》いよ。」
「あれ、情《じやう》が強《こは》いねえ、さあ、え
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