/\》しい横顏《よこがほ》と帽子《ばうし》の鍔廣《つばびろ》な裏《うら》とを照《て》らした。
 お柳《りう》は男《をとこ》の背《せな》に手《て》をのせて、弱《よわ》いものいひながら遠慮氣《ゑんりよげ》なく、
「あら、しつとりしてるわ、夜露《よつゆ》が酷《ひど》いんだよ。直《ぢか》にそんなものに腰《こし》を掛《か》けて、あなた冷《つめた》いでせう。眞《ほん》とに養生深《やうじやうぶか》い方《かた》が、其《それ》に御病氣《ごびやうき》擧句《あげく》だといふし、惡《わる》いわねえ。」
 と言《い》つて、そつと壓《おさ》へるやうにして、
「何《なん》ともありはしませんか、又《また》ぶり返《かへ》すと不可《いけ》ませんわ、金《きん》さん。」
 其《それ》でも、ものをいはなかつた。
「眞《ほん》とに毒《どく》ですよ、冷《ひ》えると惡《わる》いから立《た》つていらつしやい、立《た》つていらつしやいよ。其《その》方《はう》が増《まし》ですよ。」
 といひかけて、あどけない聲《こゑ》で幽《かすか》に笑《わら》つた。
「ほゝゝゝ、遠《とほ》い處《ところ》を引張《ひつぱ》つて來《き》て、草臥《くたび》れたで
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