》に、小さな足を投出して、横坐りになった、浪吉の無事な姿を見た。
学校は、便宜に隊を組んで避難したが、皆ちりちりになったのである。
と見ると、恍惚《うっとり》した美しい顔を仰向けて、枝からばらばらと降懸《ふりかか》る火の粉を、霰《あられ》は五合《ごんご》と掬《すく》うように、綺麗な袂《たもと》で受けながら、
「先生、沢山に茱萸が。」
と云って、※[#「藹」の「言」に代えて「月」、第3水準1−91−26]長《ろうた》けるまで莞爾《にっこり》した。
雑所は諸膝《もろひざ》を折って、倒れるように、その傍《かたわら》で息を吐《つ》いた。が、そこではもう、火の粉は雪のように、袖へ掛《かか》っても、払えば濡れもしないで消えるのであった。
[#地から1字上げ]明治四十四(一九一一)年一月
底本:「泉鏡花集成4」ちくま文庫、筑摩書房
1995(平成7)年10月24日第1刷発行
2004(平成16)年3月20日第2刷発行
入力:土屋隆
校正:門田裕志
2005年11月24日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全18ページ中18ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング