作物の用意
泉鏡花

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)饒舌《しやべ》つて

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「麻/(ノ+ム)」、第4水準2−94−57]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ドン/\
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 私が作物に對する用意といふのは理窟はない、只好いものを書きたいといふ事のみです。されば現代の風潮はどうあらうと其※[#「麻/(ノ+ム)」、第4水準2−94−57]事《そんなこと》には構はず私は私の好きなものの、胸中に浮んだものを書くばかりです。人間には誰にでも好き嫌ひがあつて自分が嫌ひなものでも文壇の風潮だと云つて無理に書いたものは、何等の興味が無くつて丁度毛脛に緋縮緬が搦んだ樣なものですから、私は何等の流行を追はず好いたものを書かうと思つて居ます、否《いや》書いて居るのです。例へば茲に一人の人物を描くにしたところが其性格は第二、第一其人にならなければ不可《いけ》ぬと思ふと同時にまた一方には描かうと思ふ
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