可いとした処で、お前さんのような御身分じゃあ、鎖《じょう》を下ろした御門もあろうし、お次にはお茶坊主、宿直《とのい》の武士というのが控えてる位なもんじゃあないか。よくこうやって夜一夜《よッぴて》出歩かれるねえ。」
「何、そりゃおいら整然《ちゃん》と旨《うま》くやってるから、大概内の奴あ、今時分は御寝《ぎょし》なっていらっしゃると思ってるんだ。何から何まで邸の事をすっかり取締ってるなあ、守山てって、おいらを連れて来た爺さんだがね、難かしい顔をしてる割にゃあ解ってて、我儘《わがまま》をさしてくれらあね。」
「成程ね、華族様の内をすっかり預《あずか》って、何のこたあない乞食からお前さんを拾上げたほどの人だから、そりゃお前さんを扱うこたあ、よく知っているんだろう。」
「ああ、ただもう家名を傷《きずつ》けないようにって、耳|懊《うるさ》く言って聞かせるのよ。堅い奴だが、おいら嫌いじゃあねえ。」
「ふむ、それでお前さん、盗賊《どろぼう》をすりゃ世話は無いじゃあないか。」と言って、心ありげに淋しい笑《えみ》を含んだのである。
「おいら何もこれを盗って、儲けようというんじゃあなし、ただ遊んで楽《たのし
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