《とやま》の反魂丹売《はんごんたんうり》に逢《あ》わしったというではないか、それみさっせい、あの助平野郎《すけべいやろう》、とうに馬になって、それ馬市で銭《おあし》になって、お銭《あし》が、そうらこの鯉に化けた。大好物で晩飯の菜になさる、お嬢様を一体何じゃと思わっしゃるの)。」[#ここで【)。」】となっているは【。)」】のミス? 172−1]
私《わたし》は思わず遮《さえぎ》った。
「お上人《しょうにん》?」
二十六
上人は頷《うなず》きながら呟《つぶや》いて、
「いや、まず聞かっしゃい、かの孤家《ひとつや》の婦人《おんな》というは、旧《もと》な、これも私《わし》には何かの縁《えん》があった、あの恐しい魔処《ましょ》へ入ろうという岐道《そばみち》の水が溢《あふ》れた往来で、百姓が教えて、あすこはその以前医者の家であったというたが、その家の嬢様じゃ。
何でも飛騨《ひだ》一円当時変ったことも珍らしいこともなかったが、ただ取り出《い》でていう不思議はこの医者の娘《むすめ》で、生まれると玉のよう。
母親殿《おふくろどの》は頬板《ほおっぺた》のふくれた、眦《めじり》の下った、鼻の低い、俗にさし乳《ぢち》というあの毒々しい左右の胸の房を含んで、どうしてあれほど美しく育ったものだろうという。
昔から物語の本にもある、屋の棟《むね》へ白羽の征矢《そや》が立つか、さもなければ狩倉《かりくら》の時|貴人《あでびと》のお目に留《とま》って御殿《ごてん》に召出《めしだ》されるのは、あんなのじゃと噂《うわさ》が高かった。
父親《てておや》の医者というのは、頬骨《ほおぼね》のとがった髯《ひげ》の生えた、見得坊《みえぼう》で傲慢《ごうまん》、その癖《くせ》でもじゃ、もちろん田舎《いなか》には刈入《かりいれ》の時よく稲《いね》の穂《ほ》が目に入ると、それから煩《わずら》う、脂目《やにめ》、赤目《あかめ》、流行目《はやりめ》が多いから、先生眼病の方は少し遣《や》ったが、内科と来てはからッぺた。外科なんと来た日にゃあ、鬢附《びんつけ》へ水を垂らしてひやりと疵《きず》につけるくらいなところ。
鰯《いわし》の天窓《あたま》も信心から、それでも命数の尽《つ》きぬ輩《やから》は本復するから、外《ほか》に竹庵養仙木斎《ちくあんようせんもくさい》の居ない土地、相応に繁盛《はんじょう》し
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