、天井《てんじやう》は低《ひく》いが、梁《うつばり》は丸太《まるた》で二抱《ふたかゝへ》もあらう、屋《や》の棟《むね》から斜《なゝめ》に渡《わた》つて座敷《ざしき》の果《はて》の廂《ひさし》の処《ところ》では天窓《あたま》に支《つか》へさうになつて居《ゐ》る、巌丈《がんぢやう》な屋造《やづくり》、是《これ》なら裏《うら》の山《やま》から雪頽《なだれ》が来《き》てもびくともせぬ。
 特《こと》に炬燵《こたつ》が出来《でき》て居《ゐ》たから私《わたし》は其《その》まゝ嬉《うれ》しく入《はい》つた。寐床《ねどこ》は最《も》う一|組《くみ》同一《おなじ》炬燵《こたつ》に敷《し》いてあつたが、旅僧《たびそう》は之《これ》には来《きた》らず、横《よこ》に枕《まくら》を並《なら》べて、火《ひ》の気《け》のない臥床《ねどこ》に寐《ね》た。
 寐《ね》る時《とき》、上人《しやうにん》は帯《おび》を解《と》かぬ、勿論《もちろん》衣服《きもの》も脱《ぬ》がぬ、着《き》たまゝ丸《まる》くなつて俯向形《うつむきなり》に腰《こし》からすつぽりと入《はい》つて、肩《かた》に夜具《やぐ》の袖《そで》を掛《か》けると手
前へ 次へ
全147ページ中11ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング