《つじ/\》の祭《まつり》の太鼓《たいこ》、わつしよい/\の諸勢《もろぎほひ》、山車《だし》は宛然《さながら》藥玉《くすだま》の纒《まとひ》を振《ふ》る。棧敷《さじき》の欄干《らんかん》連《つらな》るや、咲《さき》掛《かゝ》る凌霄《のうぜん》の紅《くれなゐ》は、瀧夜叉姫《たきやしやひめ》の襦袢《じゆばん》を欺《あざむ》き、紫陽花《あぢさゐ》の淺葱《あさぎ》は光圀《みつくに》の襟《えり》に擬《まが》ふ。人《ひと》の往來《ゆきき》も躍《をど》るが如《ごと》し。酒《さけ》はさざんざ松《まつ》の風《かぜ》。緑《みどり》いよ/\濃《こまや》かにして、夏木立《なつこだち》深《ふか》き處《ところ》、山《やま》幽《いう》に里《さと》靜《しづか》に、然《しか》も今《いま》を盛《さかり》の女《をんな》、白百合《しらゆり》の花《はな》、其《そ》の膚《はだへ》の蜜《みつ》を洗《あら》へば、清水《しみづ》に髮《かみ》の丈《たけ》長《なが》く、眞珠《しんじゆ》の流《ながれ》雫《しづく》して、小鮎《こあゆ》の簪《かんざし》、宵月《よひづき》の影《かげ》を走《はし》る。

      七月《しちぐわつ》

 灼熱《し
前へ 次へ
全14ページ中6ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング