うに胸を抱く。
二人続いて入る、この一室|襖《ふすま》、障子にて見物の席より見えず。
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七左 (襖の中《うち》にて)ここはまた掛花活《かけばないけ》に山茶花《さざんか》とある……紅《あか》いが特に奥方じゃな、はッはッはッ。
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撫子、勝手に立つ。入《いれ》かわりて、膳部《ぜんぶ》二調、おりく、おその二人にて運び、やがて引返す。
撫子、銚子《ちょうし》、杯洗《はいせん》を盆にして出で、床なる白菊を偶《ふ》と見て、空瓶《あきびん》の常夏に、膝をつき、ときの間にしぼみしを悲《かなし》む状《さま》にて、ソと息を掛く。また杯洗を見て、花を挿直し、猪口《ちょく》にて水を注《つ》ぎ入れつつ、ほろりとする。
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村越 (手を拍《たた》く。)
撫子 はい、はい。(と軽く立ち、襖に入る。)
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七左、程もあらせず、銚子を引攫《ひッつか》んで載せたるままに、一人前《ひとりまえ》の膳
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