《やす》んでいなさるようだ」
「どれどれ」と見向く年増の背後《うしろ》に声ありて、
「おい、そろそろ出掛けようぜ」
旅装束したる四、五人の男は二人のそばに立ち住《ど》まりぬ。年増は直ちに猿を抱き取りて、
「そんなら、姉《ねえ》さん」
「参りましょうかね」
両箇《ふたり》の女は渠らとともに行きぬ。続きて一団また一団、大蛇《だいじゃ》を籠《かご》に入れて荷《にな》う者と、馬に跨《またが》りて行く曲馬芝居の座頭《ざがしら》とを先に立てて、さまざまの動物と異形の人類が、絡繹《らくえき》として森蔭《もりかげ》に列を成せるその状《さま》は、げに百鬼夜行一幅の活図《かっと》なり。
ややありて渠らはみな行き尽くせり。公園は森邃《しんすい》として月色ますます昏《くら》く、夜はいまや全くその死寂に眠れるとき、※[#「谷+含」、第4水準2−88−88]谺《こだま》に響き、水に鳴りて、魂消《たまぎ》る一声《ひとこえ》、
「あれえ!」
五
水は沈濁して油のごとき霞《かすみ》が池《いけ》の汀《みぎわ》に、生死も分かず仆《たお》れたる婦人あり。四|肢《し》を弛《ゆる》めて地《つち》に領伏《
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