おなじような蛇が、おなじような状《さま》して、おなじように、揃って一尺ほどずつ、砂の中から鎌首を擡《もた》げて、一斉に空を仰いだのであった。その畝《うね》る時、歯か、鱗か、コツ、コツ、コツ、カタカタカタと鳴って響いた。――洪水に巻かれて落ちつつ、はじめて柔《やわらか》い地を知って、砂を穿《うが》って活《い》きたのであろう。
 きゃッ、と云うと、島が真中《まんなか》から裂けたように、二人の身体《からだ》は、浜へも返さず、浪打際《なみうちぎわ》をただ礫《つぶて》のように左右へ飛んで、裸身《はだか》で逃げた。
[#地から1字上げ]大正十五(一九二六)年一月



底本:「泉鏡花集成8」ちくま文庫、筑摩書房
   1996(平成8)年5月23日第1刷発行
入力:本山智子
校正:門田裕志
2001年6月25日公開
2005年9月26日修正
青空文庫ファイル:
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