》十斤也。緞子《どんす》、縮緬《ちりめん》、綾《あや》、錦《にしき》、牡丹《ぼたん》、芍薬《しゃくやく》、菊の花、黄金色《こんじき》の董《すみれ》、銀覆輪《ぎんぷくりん》の、月草、露草。
侍女一 もしもし、唯今《ただいま》のそれは、あの、残らず、そのお娘御《むすめご》の身の代《しろ》とかにお遣わしの分なのでございますか。
僧都 残らず身の代と?……はあ、いかさまな。(心付く)不重宝《ぶちょうほう》。これはこれは海松《みる》ふさの袖に記して覚えのまま、潮《うしお》に乗って、颯《さっ》と読流しました。はて、何から申した事やら、品目の多い処へ、数々ゆえに。ええええ、真鯛大小八千枚。
侍女一 鰤、鮪ともに二万疋。鰹、真那鰹|各《おのおの》一万本。
侍女二 (僧都の前にあり)大比目魚五千枚。鱚、魴※[#「魚+弗」、第3水準1−94−37]、鯒、あいなめ、目ばる、藻魚の類合せて七百籠。
侍女三 (公子の背後にあり)若布のその幅六丈、長さ十五尋のもの百枚|一巻《ひとまき》九千連。
侍女四 (同じく公子の背後に)鮟鱇五十袋、虎河豚一頭、大の鮹|一番《ひとつがい》。まあ……(笑う。侍女皆笑う。)
僧都 
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