。
僧都 いやいや、鱗《うろこ》一枚、一草《ひとくさ》の空貝《うつせがい》とは申せ、僧都が承りました上は、活達なる若様、かような事はお気煩《きむず》かしゅうおいでなさりましょうなれども、老《おい》のしょうがに、お耳に入れねばなりませぬ。お腰元衆もお執成《とりなし》。(五人の侍女に目遣《めづかい》す)平《ひら》にお聞取りを願わしゅう。
侍女三 若様、お座へ。
公子 (顧みて)椅子《いす》をこちらへ。
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侍女三、四、両人して白き枝珊瑚《えださんご》の椅子を捧げ、床の端近《はしぢか》に据う。大|隋円形《だえんけい》の白き琅※[#「王+干」、第3水準1−87−83]《ろうかん》の、沈みたる光沢を帯べる卓子《テエブル》、上段の中央にあり。枝のままなる見事なる珊瑚の椅子、紅白二脚、紅《あか》きは花のごとく、白きは霞のごときを、相対して置く。侍女等が捧出《ささげい》でて位置を変えて据えたるは、その白き方《かた》一脚なり。
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僧都 真鯛《まだい》大小八千枚。鰤《ぶり》、鮪《まぐろ》、ともに二万|疋《びき》。鰹《
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