女、手を曳《ひ》かる。ともに床に上《のぼ》る。公子剣を軽く取る。)終生を盟《ちか》おう。手を出せ。(手首を取って刃を腕《かいな》に引く、一線の紅血《こうけつ》、玉盞《ぎょくさん》に滴る。公子返す切尖《きっさき》に自から腕を引く、紫の血、玉盞に滴る。)飲め、呑もう。
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盞《さかずき》をかわして、仰いで飲む。廻廊の燈籠一斉に点《とも》り輝く。
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あれ見い、血を取かわして飲んだと思うと、お前の故郷《くに》の、浦の磯《いそ》に、岩に、紫と紅《あか》の花が咲いた。それとも、星か。
(一同打見る。)
あれは何だ。
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美女 見覚えました花ですが、私はもう忘れました。
公子 (書を見つつ)博士、博士。
博士 (登場)……お召。
公子 (指《ゆびさ》す)あの花は何ですか。(書を渡さんとす。)
博士 存じております。竜胆《りんどう》と撫子《とこなつ》でございます。新夫人《にいおくさま》の、お心が通いまして、折からの霜に、一際色が冴《さ》えました。若様と奥様の血の俤《おもかげ》でございます。
公
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