唄立山心中一曲
泉鏡花

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)松明《たいまつ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)信州|姨捨《おばすて》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「けものへん+葛」、第3水準1−87−81]子鳥《あとり》
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       一

「ちらちらちらちら雪の降る中へ、松明《たいまつ》がぱっと燃えながら二本――誰も言うことでございますが、他《ほか》にいたし方もありませんや。真白《まっしろ》な手が二つ、悚然《ぞっ》とするほどな婦《おんな》が二人……もうやがてそこら一面に薄《うっす》り白くなった上を、静《しずか》に通って行《ゆ》くのでございます。正体は知れていても、何しろそれに、所が山奥でございましょう。どうもね、余り美しくって物凄《ものすご》うございました。」
 と鋳掛屋《いかけや》が私たちに話した。
 いきなり鋳掛屋が話したでは、ちと唐突《だしぬけ》に過ぎる。知己《ちかづき》になってこの話を聞いた場所と、そのい
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