》既《すで》に冬《ふゆ》にして我《わ》が思《おも》ふがまゝならずと。然《しか》れども花《はな》開《ひら》いて絢爛《けんらん》たり。昌黎《しやうれい》植《う》うる處《ところ》、牡丹《ぼたん》もと紫《むらさき》、今《いま》は白紅《はくこう》にして縁《ふち》おの/\緑《みどり》に、月界《げつかい》の採虹《さいこう》玲瓏《れいろう》として薫《かを》る。尚《な》ほ且《か》つ朶《はなびら》ごとに一聯《いちれん》の詩《し》あり。奇《き》なる哉《かな》、字《じ》の色《いろ》分明《ぶんみやう》にして紫《むらさき》なり。瞳《ひとみ》を定《さだ》めてこれを讀《よ》めば――雲横秦嶺家何在《くもしんれいによこたはつていへいづくにかある》、雪擁藍關馬不前《ゆきらんくわんをようしてうますゝまず》――昌黎《しやうれい》、時《とき》に其《そ》の意《い》の何《なに》たるを知《し》らず。既《すで》にして猶子《いうし》が左道《さだう》を喜《よろこ》ばず、教《をし》ふべからずとして、江淮《かうくわい》に追還《おひかへ》す。
未《いま》だ幾干《いくばく》ならざるに、昌黎《しやうれい》、朝《てう》に佛骨《ぶつこつ》の表《へう》を
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