うちに、一封朝奏九重天《いつぷうあしたにそうすきうちようのてん》―云々《うんぬん》とあるもの則《すなはち》是《これ》。於茲《こゝにおいて》手《て》を取《と》りて泣《な》きぬ。韓湘《かんしやう》慰《なぐさ》めて曰《いは》く、愴《いた》むこと勿《なか》れ、吾《われ》知《し》る、公《きみ》恙《つゝが》あらず、且《か》つ久《ひさ》しからずして朝廷《てうてい》又《また》公《きみ》を用《もち》ふと。別《わか》るゝ時《とき》一掬《いつきく》の雪《ゆき》を取《と》つて、昌黎《しやうれい》に與《あた》へて曰《いは》く、此《こ》のもの能《よ》く潮州《てうしう》の瘴霧《しやうむ》を消《け》さん、叔公《をぢさん》、御機嫌《ごきげん》ようと。昌黎《しやうれい》馬上《ばじやう》に是《これ》を受《う》けて袖《そで》にすれば、其《そ》の雪《ゆき》香《かぐは》しく立處《たちどころ》に花片《はなびら》となんぬとかや。
[#地から5字上げ]明治四十一年四月
底本:「鏡花全集 巻二十七」岩波書店
1942(昭和17)年10月20日第1刷発行
1988(昭和63)年11月2日第3刷発行
※題名の下にあった年代の注を、最後に移しました。
入力:門田裕志
校正:土屋隆
2007年4月9日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全3ページ中3ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング