の利剣を額にあて、竜宮に飛び入れば、左右へはっとぞ退《の》いたりける、」
[#ここで字下げ終わり]
 と謡い澄ましつつ、
「背《せな》を貸せ、宗山。」と言うとともに、恩地喜多八は疲れた状《さま》して、先刻《さっき》からその裾に、大きく何やら踞《うずく》まった、形のない、ものの影を、腰掛くるよう、取って引敷《ひっし》くがごとくにした。
 路一筋白くして、掛行燈《かけあんどん》の更けたかなたこなた、杖を支《つ》いた按摩も交って、ちらちらと人立ちする。
[#地から1字上げ]明治四十三(一九一〇)年一月



底本:「泉鏡花集成6」ちくま文庫、筑摩書房
   1996(平成8)年3月21日第1刷発行
底本の親本:「鏡花全集」岩波書店
   1942(昭和17)年7月刊行開始
※底本で句点が抜けている箇所は親本を参照して補いました。
※誤植を疑った箇所はちくま日本文学全集を参照しました。
入力:門田裕志
校正:砂場清隆
2002年1月9日公開
2005年9月25日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作
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