堪《たま》りますか。
摺抜《すりぬ》けようとするんだがね、六畳の狭い座敷、盲目《めくら》でも自分の家《うち》だ。
素早く、階子段《はしごだん》の降口を塞《ふさ》いで、むずと、大手を拡げたろう。……影が天井へ懸《かか》って、充満《いっぱい》の黒坊主が、汗膏《あせあぶら》を流して撫じょうとする。
いや、その嫉妬《しっと》執着《しゅうぢゃく》の、険な不思議の形相が、今もって忘れられない。
(可厭《いや》だ、可厭だ、可厭だ。)と、こっちは夢中に出ようとする、よける、留める、行違うで、やわな、かぐら堂の二階中みしみしと鳴る。風は轟々《ごうごう》と当る。ただ黒雲に捲《ま》かれたようで、可恐《おそろ》しくなった、凄《すご》さは凄し。
衝《つ》と、引潜《ひっくぐ》って、ドンと飛び摺りに、どどどと駈《か》け下りると、ね。
(袖《そで》や、止めませい。)
と宗山が二階で喚《わめ》いた。皺枯声《しわがれごえ》が、風でぱっと耳に当ると、三四人立騒ぐ女の中から、すっと美しく姿を抜いて、格子を開けた門口《かどぐち》で、しっかり掴《つか》まる。吹きつけて揉《も》む風で、颯《さっ》と紅《あか》い褄《つま》が
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