情《なさけ》ない。調子が自分で出来ません。何をどうして、お座敷へ置いて頂けようと思いますと、気が怯《ひ》けて気が怯けて、口も満足利けませんから、何が気に入らないで、失礼な顔をすると、お思い遊ばすのも無理はない、なあ。……
 このお家へは、お台所で、洗い物のお手伝をいたします。姉さん、え、姉さん。」
 と袖を擦《さす》って、一生懸命、うるんだ目許《めもと》を見得もなく、仰向《あおむ》けになって女中の顔。……色が見る見る柔《やわら》いで、突いて立った三味線の棹《さお》も撓《たわ》みそうになった、と見ると、二人の客へ、向直った、ふっくりとある綾《あや》の帯の結目《むすびめ》で、なおその女中の袂《たもと》を圧《おさ》えて。……

       十六

 お三重は、そして、更《あらた》めて二箇《ふたり》の老人に手を支《つ》いた。
「芸者でお呼び遊ばした、と思いますと……お役に立たず、極《きま》りが悪うございまして、お銚子《ちょうし》を持ちますにも手が震えてなりません。下婢《おさん》をお傍《そば》へお置き遊ばしたとお思いなさいまして、お休みになりますまでお使いなすって下さいまし。お背中を敲《たた》
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