よだ》つた。
ほんと[#「と」に「ママ」の注記]うに其晩《そのばん》ほど恐《こは》かつたことはない。
蛙《かはづ》の声《こゑ》がます/\高《たか》くなる、これはまた仰山《ぎやうさん》な、何百《なんびやく》、何《ど》うして幾千《いくせん》と居《ゐ》て鳴《な》いてるので、幾千《いくせん》の蛙《かはづ》が一《ひと》ツ一《ひと》ツ眼《め》があつて、口《くち》があつて、足《あし》があつて、身躰《からだ》があつて、水《みづ》ン中《なか》に居《ゐ》て、そして声《こゑ》を出《だ》すのだ。一《ひと》ツ一《ひと》ツトわなゝいた。寒《さむ》くなつた。風《かぜ》が少《すこ》し出《で》て樹《き》がゆつさり動《うご》いた。
蛙《かはづ》の声《こゑ》がます/\高《たか》くなる、居《ゐ》ても立《た》つても居《ゐ》られなくツて、そつと動《うご》き出《だ》した、身躰《からだ》が何《ど》うにかなつてるやうで、すつと立《た》ち切《き》れないで蹲《つくば》つた、裾《すそ》が足《あし》にくるまつて、帯《おび》が少《すこ》し弛《ゆる》むで、胸《むね》があいて、うつむいたまゝ天窓《あたま》がすはつた。ものがぼんやり見《み》える。
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