でもいるんぢやあありません。また落《お》つこちやうもんなら。」
ちよいと見向《みむ》いて、清《すゞし》い眼《め》で御覧《ごらん》なすつて莞爾《につこり》してお俯向《うつむ》きで、せつせと縫《ぬ》つて居《ゐ》らつしやる。
さう、さう! さうであつた。ほら、あの、いま頬《ほ》つぺたを掻《か》いてむく/\濡《ぬ》れた毛《け》からいきりをたてゝ日向《ひなた》ぼつこをして居《ゐ》る、憎《にく》らしいツたらない。
いまじやあもう半年《はんとし》も経《た》つたらう、暑《あつ》さの取着《とつつき》の晩方頃《ばんかたごろ》で、いつものやうに遊《あそ》びに行《い》つて、人《ひと》が天窓《あたま》を撫《な》でゝやつたものを、業畜《がふちく》、悪巫山戯《わるふざけ》をして、キツ/\と歯《は》を剥《む》いて、引掻《ひつか》きさうな権幕《けんまく》をするから、吃驚《びつくり》して飛退《とびの》かうとすると、前足《まへあし》でつかまへた、放《はな》さないから力《ちから》を入《い》れて引張《ひつぱ》り合《あ》つた奮《はづ》みであつた。左《ひだり》の袂《たもと》がびり/\と裂《さけ》てちぎれて取《とれ》たはづみをくつて
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