こ》られますよ。唯《たゞ》、ねえ、さう思《おも》つて、居《ゐ》れば、可《いゝ》のだから、いつてはなりませんよ。可《いゝ》かい。そして先生《せんせい》が腹《はら》を立《た》つてお憎《にく》みだつて、さういふけれど、何《なに》そんなことがありますものか。其《それ》は皆《みんな》お前《まへ》がさう思《おも》ふからで、あの、雀《すゞめ》だつて餌《ゑさ》を与《や》つて、拾《ひろ》つてるのを見《み》て、嬉《うれ》しさうだと思《おも》へば嬉《うれ》しさうだし、頬白《ほゝじろ》がおぢさんにさゝれた時《とき》悲《かな》しい声《こゑ》だと思《おも》つて見《み》れば、ひい/\いつて鳴《な》いたやうに聞《き》こえたぢやないか。
それでも先生《せんせい》が恐《こは》い顔《かほ》をしておいでなら、そんなものは見《み》て居《ゐ》ないで、今《いま》お前《まへ》がいつた、其《その》うつくしい菊《きく》の花《はな》を見《み》て居《ゐ》たら可《いゝ》でしやう。ね、そして何《なに》かい、学校《がくかう》のお庭《には》に咲《さ》いてるのかい。」
「あゝ沢山《たくさん》。」
「ぢやあ其《その》菊《きく》を見《み》やうと思《おも》
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