せんもの。雀《すゞめ》だつて、四十雀《しじふから》だつて、軒《のき》だの、榎《えのき》だのに留《と》まつてないで、僕《ぼく》と一所《いつしよ》に坐《すわ》つて話《はな》したら皆《みんな》分《わか》るんだけれど、離《はな》れてるから聞《き》こえませんの。だつてソツとそばへ行《い》つて、僕《ぼく》、お談話《はなし》しやうと思《おも》ふと、皆《みんな》立《た》つていつてしまひますもの、でも、いまに大人《おとな》になると、遠《とほ》くで居《ゐ》ても分《わか》りますツて、小《ちひ》さい耳《みゝ》だから、沢山《たんと》いろんな声《こゑ》が入《はい》らないのだつて、母様《おつかさん》が僕《ぼく》、あかさん[#「あかさん」に傍点]であつた時分《じぶん》からいひました。犬《いぬ》も猫《ねこ》も人間《にんげん》もおんなじだつて。ねえ、母様《おつかさん》、だねえ母様《おつかさん》、いまに皆《みんな》分《わか》るんだね。」
第三
母様《おつかさん》は莞爾《につこり》なすつて、
「あゝ、それで何《なに》かい、先生《せんせい》が腹《はら》をお立《た》ちのかい。」
そればかりではなかつた。私《わたし》
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