よ》、また出掛けて、ううと唸《うな》って牙を剥き、眼を光らす。媼しずかに顧みて、
 やれ、虎狼より漏るが恐しや。
 と呟《つぶや》きぬ。雨は柿の実の落つるがごとく、天井なき屋根を漏るなりけり。狼うなだれて去れり、となり。
 世の中、米は高価にて、お犬も人の恐れざりしか。
[#地から1字上げ]明治四十三(一九一〇)年九月・十一月



底本:「泉鏡花集成8」ちくま文庫、筑摩書房
   1996(平成8)年5月23日第1刷発行
底本の親本:「鏡花全集 第二十八卷」岩波書店
   1942(昭和17)年11月30日発行
入力:門田裕志
校正:noriko saito
2008年10月23日作成
青空文庫作成ファイル:
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