女の子を悩ませる罪滅しに、真赤《まっか》に塗った顔なりに、すなわちハアトの一《ワン》である。真赤な中へ、おどけて、舌を出しておじぎをした。
「可厭《いや》だ。……ちょいと、半助さんは。」
「あいつは、もう。」
揃って二人ともまたおじぎをして、
「昼間っから行方知れずで。」
と口々に云う処へ、チャンチキ、チャンチキ、どどどん、ヒューラが、直ぐそこへ。――女中の影がむらむらと帳場へ湧《わ》く、客たちもぞろぞろ出て来る。……血の道らしい年増の女中が、裾長《すそなが》にしょろしょろしつつ、トランプの顔を見て、目で嬌態《しな》をやって、眉をひそめながら肩でよれついたのと、入交《いれまじ》って、門際へどっと駈出《かけだ》す。
夫人も、つい誘われて門《かど》へ立った。
高張《たかはり》、弓張《ゆみはり》が門の左右へ、掛渡した酸漿提灯《ほおずきぢょうちん》も、燦《ぱっ》と光が増したのである。
桶屋《おけや》の凧《たこ》は、もう唸《うな》って先へ飛んだろう。馬二頭が、鼻あらしを霜夜にふつふつと吹いて曳《ひ》く囃子屋台を真中《まんなか》に、磽※[#「石+角」、第3水準1−89−6]《こうかく》た
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