け、腰に長剣を捲《ま》いた、目の鋭い、裸《はだか》の筋骨《きんこつ》の引緊《ひきしま》つた、威風の凜々《りんりん》とした男は、島の王様のやうなものなの……
周囲《まわり》に、可《い》いほど間《ま》を置いて、黒人《くろんぼ》の召使が三人で、謹《つつし》んで給仕に附いて居る所。」
と俯目《ふしめ》に、睫毛《まつげ》濃く、黒棚《くろだな》の一《ひと》ツの仕劃《しきり》を見た。袖口《そでぐち》白く手を伸《の》べて、
「あゝ、一人|此処《ここ》に居たよ。」
と言ふ。天窓《あたま》の大きな、頤《あご》のしやくれた、如法玩弄《にょほうおもちゃ》の焼《やき》ものの、ペロリと舌で、西瓜《すいか》喰《く》ふ黒人《くろんぼ》の人形が、ト赤い目で、額《おでこ》で睨《にら》んで、灰色の下唇《したくちびる》を反《そ》らして突立《つった》つ。
「……余り謹《つつし》んでは居ないわね……一寸《ちょいと》、お話の中へ出ておいで。」
と手を掛けると、ぶるりとした、貧乏動《びんぼうゆる》ぎと云ふ胴揺《どうゆす》りで、ふてくされにぐら/\と拗身《すねみ》に震ふ……はつと思ふと、左の足が股《もも》のつけもとから、ぽきり
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