はず息を呑んだ。そして、そのままそつと腰掛に坐り直して自分を振り返り、詞もなくぽかんとした表情で並んでゐる政黨屋の三人の顏をちらと見返したが、刹那の思掛ない發見に對する驚きが消えた時、私はぷつと吹き出したいやうな氣持になつた。自分を、三人を思ふ樣せせら笑つてやりたいやうな……。
 けたたましい汽笛を夜闇の中に鳴り響かせながら、やがて汽車は靜にゆるぎ出した。



底本:「若き入獄者の手記」文興院
   1924(大正13)年3月5日発行
入力:小林徹
校正:柳沢成雄
2000年2月19日公開
青空文庫作成ファイル:
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