やうな感じがし出す。涯知らなさはまるで自分の體が地の涯から涯へつながる電線にでもなつたやうな感じなのだ。[#「。」は底本ではなし]そして、次の刹那にはそれがまた逆に極微少にちぢまる。まるで自分の體が針にでもなつたやうに、豆粒にでもなつたやうにちぢまるのだ。而もそのマキシマム[#「マキシマム」は底本では「アキシアム」]になる錯覺とミニマム[#「ミニマム」は底本では「ミニアム」]になる錯覺とが入れ代り立ち代り交錯する。初めはまた來たなと思つて我慢してゐるのだが、しまひにはとても恐ろしくなつて我慢にも我慢出來なくなる。そして手をのばして電燈のスヰツチをひねつて、室内がぱつと明るくなると同じ瞬間に、それは忽ち消えてしまつて自分の常態に返る。が、その錯覺の事を思ふと、二三ヶ月の間、夜が來て床にはひるのがこはくてこはくて弱らされた。殆ど滿足に睡眠をとる事が出來なかつた。二階の縁などに立つて庭を見降すと、體を下に投げ出したくなるやうな衝動に襲はれて、はつとうしろにしざつたり、部屋の本箱の抽出にしまつてある五連發の短銃の事をひよいと、思ひ出すとそれを夢中で取り出してどかんと自分を打つてしまひ[#底本で
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