らお金を貰《もら》って歩きました。
大抵《たいてい》な人は財布《さいふ》の底をはたいて、それを爺さんの手にのせて遣《や》りました。私の乳母《ばあや》も巾着《きんちゃく》にあるだけのお金をみんな遣ってしまいました。
爺さんは金をすっかり集めてしまうと、さっきの箱の側《そば》へ行って、その上を二つ三つコンコンと叩《たた》きました。
「坊主。坊主。早く出て来て、お客様方にお礼を申し上げないか。」
爺さんがこう言いますと、箱の中でコトンという音がしました。
すると、箱の蓋《ふた》がひとりでにヒョイと明いて中から子供が飛出しました。首も手も足もちゃんと附《つい》ていて、怪我《けが》一つしていない子供が、ニコニコ笑いながら、みんなの前に立ちました。
やがて、子供と爺さんは箱と綱を担《かつ》いで、いそいそと人込《ひとごみ》の中へ隠れて行ってしまいました。
底本:「赤い鳥傑作集」新潮文庫、新潮社
1955(昭和30)年6月25日発行
1974(昭和49)年9月10日29刷改版
1989(平成元)年10月15日48刷
底本の親本:「赤い鳥」10月号
1918(大正7)年10月
入力:林 幸雄
校正:本山智子
2001年5月1日公開
2005年9月25日修正
青空文庫作成ファイル:
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