して、收むべき言語の區域、または解釋の詳略などは、およそ、米國の「ヱブスター」氏の英語辭書中の「オクタボ」といふ節略體のものに傚ふべしとなり。おのれ、命を受けつるはじめは、壯年鋭氣にして、おもへらく、「オクタボ」の注釋を翻譯して、語ごとにうづめゆかむに、この業難からずとおもへり。これより、從來の辭書體の書數十部をあつめて、字母の順序をもて、まづ古今雅俗の普通語とおもふかぎりを採收分類して、解釋のありつるは併せて取りて、その外、東西洋おなじ物事の解は、英辭書の注を譯してさしいれたり。かくすること數年にして、通編を終へて、さて初にかへりて、各語を逐ひて見もてゆけば、注の成れるは夙く成りて、成らぬは成らず、語のみしるしつけて、その下は空白となりて、老人の齒のぬけたらむやうなる所、一葉ごとに五七語あり。古語古事物の意の解きがたきもの、説のまち/\なるもの、八品詞の標別の下しがたきもの、語原の知られぬもの、動詞の語尾の變化の定めかぬるもの、假名遣の據るところなくして順序を立てがたきもの、動植物の英辭書の注解に據りたりしものゝ、仔細に考へわくれば、物は同じけれども、形状色澤の、東西の風土によりて異
前へ
次へ
全27ページ中3ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
大槻 文彦 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング