塲は、終にまたく廢せられぬ。これより後は、一私人として、さらに印刷局に願ひいでずてはかなはず、その出願には、規則の手續を要せらるゝ事ありて、豫算にたがへる事もおこりしかば、編輯局にうれへまうす事どもありしかど、今はせむかたなしとて郤けられぬ、稿本下賜の恩命もあれば、しひて違約の愁訴もしかねて、それより、家兄修二、佐久間貞一君、益田孝君などの周旋を得て、とかくの手つゞきして、からうじて再着手とはなれり、此の間も、中止せられぬること、六十餘日に及びぬ。又、この前後、公用刊行の物輻湊する時は、おのれが工事は、さしおかれたる事もしば/\なりき。かく、數度の障礙にはあひつれど、この工事を他の工塲に托せむの心は起らざりき、さるは、同局の工事は、いふまでもなき事ながら、植字に※[#「てへん+交」、第4水準2−13−7]正に、謹嚴精良なる事、麻姑を雇ひて癢處を掻くが如く、また他にあるべくもあらざればなり、見む人、本書を開きて目止めよかし。さてまた、本書植字の事、原稿の上にては、さまでとも思はざりしが、さて着手となりてみれば、假名の活字は、異體別調のものなれば、寸法一々同じからず、その外、くさ/″\の符
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