死剣と生縄
江見水蔭
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)磯貝竜次郎《いそがいりゅうじろう》は
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)云う事|為《す》る事
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)蛟※[#「虫+「罔」の「亡」に代えて「曷−日−勹」」、169−4]《みずち》
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一
武士の魂。大小の二刀だけは腰に差して、手には何一つ持つ間もなく、草履突掛けるもそこそこに、磯貝竜次郎《いそがいりゅうじろう》は裏庭へと立出《たちいで》た。
「如何《いか》ような事が有ろうとも、今日こそは思い切って出立致そう」
武者修行としても一種特別の願望を以て江戸を出たので有った。疾《と》くに目的を達して今頃は江戸に帰り、喜ぶ恩師の顔を見て、一家相伝の極意秘伝を停滞《とどこおり》なく受けていなければ成らぬのが、意外な支障《さわり》に引掛《ひきかか》って、三月余りを殆ど囚虜《とらわれ》の身に均《ひと》しく過ごしたのであった。
常陸《ひたち》の国
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