で胸がさっぱりした」
 この変な敵討をよそに、小机源八郎は頻《しき》りに考え込んでいたが、やがて決心した体《てい》で、
「や、拙者はこの稲代殿を嫁に貰い受けたい」と云い出した。
 これには泰雲も七三郎もびっくりした。余りにそれは突然に過ぎたからであった。源八郎は単に稲代の境遇に同情したばかりではないのであった。泰雲の夜目の利くのが代々であるというのから考えて夜目の利く男と、同じく夜目の利く女との相婚の結果、その子により以上夜目を利かして見たいという、そうした腹から出たのであった。



底本:「怪奇・伝奇時代小説選集8 百物語 他11編」春陽文庫、春陽堂書店
   2000(平成12)年5月20日第1刷発行
底本の親本:「現代大衆文學全集 江見水蔭集」平凡社
   1928(昭和3)年
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:岡山勝美
校正:門田裕志
2006年9月22日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正
前へ 次へ
全31ページ中30ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
江見 水蔭 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング